Ausgemustert! (21.09.2015)

"Sturmgewehr"日本語に直すと突撃銃。ドイツ軍ではこの突撃銃が標準装備になっている。突撃銃の特徴は連射能力。すなわち敵を連射で威嚇して、突撃する事を主眼に置いているので突撃銃という。ちなみに自衛隊では、小銃を採用している。元来、ドイツ軍も小銃を採用していたが、第二次大戦中、数で劣るドイツ軍が押し寄せるソビエト兵の大群を押し返すのに、もっと効果的な小銃が必要になった。そこで考え出されたのがSturmgewehr 44で、500発/分も発射する事ができた。この突撃銃は前線で大活躍、戦後、ドイツ軍の標準装備になったばかりか、ドイツ軍に散々痛めつけられたソビエト軍まで、ドイツの突撃銃をコピー、AK47と命名して標準装備したほど効果的だった。

以来、世界中の軍隊ではこの突撃銃が標準装備になっている。自衛隊では元来、弾薬が少ないので、そんな贅沢なことはできない。だから小銃が採用されて、単発で撃つことに重点が置かれている。それでも弾がなくなった際に備えて、毎朝、銃剣突撃の練習に余念がない。弾薬が尽きたら小銃に着剣、突撃銃を構えている相手に、「天皇陛下万歳!」と突撃するのが日本古来の戦略だ。精神力に重点を置く自衛隊に勝ち目がないのは、戦う前から明らかだ。

現在ドイツ軍で使用されている突撃銃、"Sturmgewehr G36"は、「的に当たらない。」という「噂」にも関わらず、ほぼ20年もドイツ軍の標準装備になっている。その間、数知れぬ原因究明委員会が召集されて、その度に調査が行われたがいつも結果は同じで、「銃はいいのだが、兵士の扱いが悪い。」または、「銃はいいのだが、弾薬が悪い。」と見当違いの結果ばかりが報告されてきた。前防衛大臣は注文する前に徹底的な調査が必要とは考えず、官僚の勧めに従い新たに1200丁もの小銃を注文した。

その後、総選挙があり内閣の入れ替えがあった。オイロ フォークのスキャンダルで危うく防衛大臣を首になりかけた大臣は、第三次メルケル内閣では古巣の内務省に戻った。ところがここでも、「移民申請者に現金ではなく、クーポン券を支給すれば申請者の数が減る。」とおかしな説を提唱、比較的安全な内務省でも失態を続けている。こうして誰も欲しがらなかった防衛大臣の椅子は、メルケル首相の党内唯一のライバルであるvon der Leyen氏に提供された。女史は事実関係をはっきりさせるために、再度、銃の調査を命じた。今回は比較対象として他社の製造した突撃銃が持ち込まれ、G36との精密度の比較を行った。どの会社のどの銃が比較対象にされたか明らかにされなかったが、銃身が熱くなった状態ではG36は他社の銃よりも40%も精密度が悪かった。これではもうごまかし様がない。

問題が銃にある事がわかったので、選択肢は2つ。まずは銃に改造を施し、このまま使用する方法。改造費でまた稼げるので、製造元が希望する方法だ。もうひとつはこの銃を現役から退けて(ausgemustert)、新型銃を調達する方法だ。国防大臣はこの方法を望んだが、国防省内には製造元からいろんな便宜を払ってもらっている官僚が多く、省内では改良派が多数派だった。しかし大臣は、「ここで譲歩したら前任者と同じ失敗をする。」と自覚していた。そこで官僚ではなく、ドイツ軍のトップを国防省に招き、どちらの方法が好ましいのか、軍に意見を聞くことにした。「気候や使用状況に影響されないで精度を発揮する銃が理想的。」と軍は暗に新しい突撃銃を望んだので、G36の退役が決まった

次回の新型銃は、法律で定められているように、欧州全域に公開入札されることになった。ベルギーやイギリス、それにフランスの著名な銃の製造元は、ドイツ軍の標準装備に採用されると大きな儲けが期待できる上、名声も獲得できるのでやる気満々だ。しかし入札の結果は、G36の製造元の„Heckler & Koch“になることはほぼ間違いない。ドイツ軍が自国の軍の標準装備である銃に、外国の企業が製造している銃を採用するなど考え難くい。おそらく同社が製造している別の突撃銃に決まるだろう。

ちなみに新型銃が装備されるのは2019年という。自衛隊のように訓練をするために小銃を使用している軍隊では問題ないが、ドイツ軍はアフリカからバルカンまで派遣されて、武器の携帯が必要な危険な任務に就いている。さらにはウクライナ危機でロシアの脅威も目の当たりとなったばかりだ。3年間も待っていられないし、3年間も的に当たらない銃をそのまま使用するのも、士気の関係もあってあまり好ましくない。そこで国防省は、「繋ぎ」として、„Heckler & Koch“社の別の銃を調達する可能性を検討している。その候補はHK416だ。この銃は2005に製造が始まった銃で、すでにドイツ軍にも装備されており評判もいい。すぐに製造に入れて、比較的短期間で支給できる利点もある。ただし問題がないわけではない。

この銃は突撃銃ではなく、 "leichtes Maschinengewehr"(軽機関銃)なのだ。1分に850発も発射できるこの高性能の軽機関銃は、火薬の燃焼によって生じる熱ですぐに銃が加熱されて命中精度が下がらないように銃身を太くしている。お陰で、「正確に射撃できる。」と評判もいいが、G36よりも1KG重い。もっともこれは名前だけの問題で、突撃銃と軽機関銃はほぼ同一の性能を有している。実際、ヘックラーコッホ社は、HK416を改良(軽くしている)したHK416 A5突撃銃を商品カタログに載せており、注文が来るのを待っている。

ちなみにドイツ軍は、もうひとつの銃の問題を抱えている。ドイツ軍は同じくヘックラーコッホ社に機関銃、MG5を注文、これがようやく配備された。機関銃は装甲車の「屋根」に備え付けられるのだが、これが装甲車の「受け皿」に乗らないのだ。MG5により退役することになるMG3は、同じくヘックラーコッホ社製だ。しかるに同社が何故、MG5の「底」の形を変えて、MG3の受け皿では使用できないようにしたのか、誰にもその原因がわかっていない。ドイツ軍は調達書にサインをしてしまっているので、13000丁の機関銃すべての改造が必要になり、その費用は5000億ユーロと見積もられている。さらにはMG5はMG36と同様の特徴、すなわち銃身が熱くなると命中精度が下がることが、製造元からも確認されており、ドイツ軍にはまたひとつ頭痛の種が増えた形だ。

こうした問題は、国防省と製造元との密接な関係に由来している。調達部の軍人、官僚は退職後、武器の製造元の相談役として再就職したり、あるいは現役の生活でもいろんな面倒を見てもらっている。これが原因で、初期の段階で問題が見つかっても対処されず、まずはもみ消されて、欠陥を抱えた装備の配備がスムーズに滞りなく行われるように取り計う。その後に問題が表面化しても、改造費用としてドイツ軍に請求書を送れば済む。こうした癒着が改善されない限り(改善される見込みはない)、今後もここで数々のスキャンダルを紹介できることになりそうだ。


退役が決まったG36。
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