奨励金 (08.05.2016)

フォルクスワーゲンによる排ガス操作は、各国の交通省は自ら審査をしないで、メーカーが提出した排ガス値を頭から信用して販売許可を出していた事を明きからにした。その後にばれた三菱自動車の消費データの20年以上に渡る捏造が、そのいい証拠だ。日本の消費者は、かってVWの排ガス操作が発覚したときにそうだったように、三菱自動車を厳しく非難しているが、非難の矛先が何故か国の監査機関に向いていない。自動車業界に関わらず、工場の出す廃棄物の規定を国が設定したなら、これをちゃんとチェックするのが国の責務だろう。その責務を果たさないで、「ちゃんと守っております。」という工場の言い分を信用した国は、アスベスト訴訟で国の落ち度を指摘されて慰謝料の請求を命じられた。同じことが、今回の不祥事にも適用される。

今後、日本の監査機関が真面目に調査すれば、同じような例が出てくるのは時間の問題だろう。実際、ドイツでは排ガスをちゃんと計測していなかった自動車庁に非難が集中した。担当の運輸大臣は非難の矛先をかわすため、VWを含めてドイツで認可されている53の自動車で、走行テストをしてみた。するとテストで測定された値は、報告されている排ガスの基準値よりも数倍も高く、ほとんどのメーカが同様の措置を取っていることが明らかになった。とりわけ測定値が報告地よりもかけ離れている22車、VWを筆頭にオペルやメルセデス、それに一部の日本車まで対し、リコールを行って排ガス測定値を改善掏るように命じた。

EU議会が委託した調査によると排ガス、主に窒素酸化物、粉塵によりドイツ国内で年間65000人もの人間が死亡しているという。死亡事故が3300人程度であることを考えれば、その20倍もの人が汚染された空気で死亡している計算になる。そこでドイツ政府は都市部の空気の改善を目指して数年前に、「ドイツは電気自動車の導入で先人の役を演じる。」と大見得を切った。具体的には2020年までに100万台の電気自動車の導入するという。ちなみに期限まで4年を切った2016年、ドイツを走っている電気自動車は2万5千台。ちなみに日本では5万台少々。残る4年未満で97万台も登録されるわけがない。

しかしドイツ人が潔く負けを認めるなら、第二次大戦もあんなに長くは続かなかったろう。政府はここに来て自動車業界からの要請に折れ、電気自動車を買うと、国から補助金を出すことにした。肝心の金額だが電気自動車を買うと4000ユーロ、ハイブリット車だと3000ユーロとなる。皆まで言えば税抜きの車両価格が6万ユーロまでの電気、あるいはハイブリット車に対して支払われるので、高級電気自動車テスラーSは対象外だ。さらにこの補助金の半分は、自動車メーカーが出す。すなわち、「テスラー3なら補助金の対象内!」と喜んでも、テスラーが「うちはそんな補助金は要りません。」と言ったら、補助金の対象外となる。あくまでも車メーカーが補助金を半額持つ場合に限られる。

「じゃ、この機会に電気自動車にしちゃおう!」と楽観するのは、まだ早すぎる。まず会社、あるいは自宅の駐車場に充電するためのコンセントがない。市内でも電気自動車用の高速チャージは希少価値で使い勝手が悪すぎる。さらには蓄電池の寿命の問題もある。携帯電話やノートパソコンの蓄電池が劣化するように、電気自動車の蓄電池も劣化する。総走行距離で10キロ、そんなに走らない場合は12年が寿命と言われている。減価償却が激しく、中古車としてまともな値段では売れそうにない。さらに10年もすれば技術革新で画期的な蓄電池が登場しているだろうから、10年後には多くの電気自動車は廃車処分になる可能性が高く、経済的、環境にも優しいとも思えない。

政府は補助金の上限を12億ユーロまでに限定している。要するに、「早い者勝ち」の戦略で、用意した金がなくなり次第補助金は終わりなので、「あまりマイナス面は考えないように。」というわけだ。もし期待したほど反響がない場合は、政府の100万台電気自動車導入目標である年の前年、2019年にて終了する。しかしドイツ人は、車を「一番人気のおもちゃ」と呼ぶほど、性別に関係な車好きだ。同時にドイツ人は、「ケチ」として名高い国民だ。果たしてそのドイツ人が4000ユーロ程度の補助金で、日々の充電の面倒と走行距離の短さの短所受け入れて、10年後には廃車になる車を買うだろうか。

編集後記
奨励金の導入で電気、およびハイブリット車の登録台数が上昇すると期待していたメーカーは幻滅を味わった。最初の4週間でわずか1791件の申請があっただけ。このままでは国が用意した12億ユーロが空になるまで、14年間も必要になる見通しだ。国は3年ほどでなくなると計算していたので、大きな誤算だ。高速充電施設の欠落、ガソリン車よりも高い値段、そして安いガソリン代がネックになって、ドイツ人は電気自動車に関心を寄せていない。奨励金が導入される前から言われていたことではあるが、「それ見ろ。いわんこっちゃない。」と言わずにはおれない。


警察曰く、「音が出ないから容疑者が気づかない。」という利点があるそうだが、
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"Blaulicht"(警告サイレン)であっという間に電池がなくなりそう。
          
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