"versagt(役立たず)“ (04.06.2016)

ここでも何度か紹介している通り、ドイツ国内ではここ数年、都市部における家賃の上昇が著しい。同じアパートに住んでいるとかわらないが、引越しをすると知らないうちに市内の平均家賃、"Mietepiegel"が上昇しており、大いに驚く。大都市とは言えないアウグスブルクでも、4年間で家賃が36%も上昇している。ドイツ人の好みが「緑の多い郊外」から「便利な街中)に変わり、住民が都市部に移住を始め、都市部における住宅への需要が上昇したのが原因だ。これに加えて国が安価な住宅の建築をやめ、すでに存在していた市営住宅、県営住宅を投資家に売却して、すでに熱くなっていた不動産市場をさらに後押しした。皆まで言えば去年だけで110万人もやってきた難民も、住宅不足に拍車をかけた。そして不動産価格が上昇すると、投資の対象になる。投資家が安い不動産を買い上げると、改装工事を施して高級不動産に変身、不動産価格(と家賃)は、上昇に上昇を続けている。

一年前ドイツ政府、正確言えば法務大臣は"Mietpreisbremse"(家賃ブレーキ)を導入した。「家賃は市の平均家賃と比較して、10%以上差があってはならない。」という内容だったが、対称はすでに存在している賃貸物件に限られた。新築の場合は好きな家賃を設定できるので、ブレーキの効果が疑われたが、この法律は2015年6月1日から施行された。1年後、ドイツの著名な経済研究所が"Mietpreisbremse"の成果を発表した。そこには、「家賃ブレーキは家賃を抑えるどころか、全くの逆効果だった。」と書かれていた。ブレーキが利かない("versagt")ならある程度理解できるが、逆効果とはどういうことなだろう。

家賃ブレーキが導入されると聞いたドイツ中の大家は、この法律が施行される前にこぞって家賃を引き上げた(例外もあります。)。こうして家賃の上昇にブレーキをかける筈だった法律が、全く逆の効果を発揮した。さらには間の抜けたことに、法務大臣人は法律を遵守しない場合の罰則を適用しなかった。罰則のない法律が守られるなんて、まるで子供のように純真な心を持っているに違いない。しかしミュンヘン、ハンブルク、ベルリン、ケルン、その他の都市部でアパートを持っている大家が、儲かるチャンスをみすみす逃す筈もなく、賃貸人が代わると20~30%も平気で家賃を上乗せした。結果、家賃ブレーキはいい場合でも全く効果を発揮していないか、ひどい場合は全くの逆効果を及ぼしたと報告書は結論した。

野党は、「抜け穴だらけの法律が効く訳ないと、1年前に言ったでしょ。」と勝ち誇った。プライドを傷つけられた法務大臣は、「賃貸人は自分の権利を主張すべきだ。」と家賃ブレーキが効果を発揮しない原因を、賃貸人におしつけた。しかしアパートの見学に行くと、20~30人ものライバルとの競争になる。この熾烈な戦いを勝ち抜いて勝ち取った賃貸契約で、「大家さん、これは法律違反なので署名しません。」と言える賃貸人が居るとも思っているのだろうか。法務大臣はそれでも過失の一端を認め、「法律を改正することも辞さない。」と発言しているが、1)連立与党内で合意がとれるかどうか。2)この政権はあと1年しか期間がない。在任中に法改正までできるのか。3)仮に法改正が出来ても、ブレーキが利くのか?という疑問が残っており、今後も家賃の上昇が止まりそうににない。

ちなみにドイツの隣国、オーストリアではドイツよりも賢い住宅政策がとられている。ドイツでは国が所有している土地を不動産業者に売って、政府の台所事情の改善に費やされている。典型的な例が、国が所有していたベルリンの中央駅付近の広大な土地だ。政府は住宅不足を知っているのに、この土地を不動産会社に売却、業者はここに高級オフィス、高級ホテル、それにシッピングセンターを建てる予定で、ますます家賃の上昇を煽ることになる。オーストリアでは国が所有する土地を不動産業者が借り受けて住宅を建てるが、国の土地なので家賃の上限が決められている。こうして都市部でも十分に安い物件が提供されており、家賃の上昇が効果的に押さえられている。高級物件を建設しても、同じ場所にはるかに安い住宅があり、誰でも借りることができるからだ。同じ「ドイツ人」なのに、オーストリアでは社会的な政治が行われており、ドイツとは大きな対象をなしている。



責任を賃貸人に押し付ける法務大臣
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