墜落  (28.07.2016)

7月14日、スロヴェニアで軽飛行機が墜落した。墜落理由は不明だが、かなり激しい墜落だったようで飛行機は原型をとどめておらず、パイロットと乗客の4名がこの事故で死亡した。事故現場を捜査したスロヴェニアの警察は、犠牲者の所有物と推測される鞄を確保した。事故現場を取り締まる警察がこの鞄を開けてみると、そこには彼の一生で稼ぐ金の数倍、数十倍の現金、それともスイスフランが詰まっていた。この事実からこの飛行機の乗客はただの観光客ではないと判断、身につけていた書類から身元を推測すると、管轄の上司にこれを連絡、警察からドイツ領事館にドイツ国籍と思われる乗客3名が墜落死したと伝えられた。

飛行機に乗っていたと推測されたのはドイツのスタートアップ業界のプリンス、Thomas Wagner氏だった。氏は早くからインターネットでさまざまなサービスを提供しており、とりわけ航空チケットの検索販売サイト"Fluege.de"、ドイツ人の大好きな休暇の検索サイト"Ab in den Urlaub.de"は大成功で、氏は20代という若さでミリオネアになった。ところがこの成功は、長続きするものではなかった。いきなりお金持ちになった人物が頻繫にやるミス、成功をみせびらかせずにはおられない、をやってしまった。豪華な車、美人、豪邸というお決まりのパターンに加えて、オンライン会社なので必要もないのにライプチッヒの一等地の建物をオフィスとしてまるごと借り切るなど、まるで王様のように振舞った。航空チケットや休暇を販売、航空会社や大手の旅行主催者から手数料を取るだけでは満足せず、独自の旅行代理店も開店、ますます会社のランニングコストを膨らませていった。

氏が成功したオンライン上での航空チケット、休暇の販売はそれなりのプログラムが必要だが、プログラマーさえ集めれば誰もできる。氏の成功を見て大手の旅行主催者は独自のホームページで休暇を販売、航空会社は独自のホームページでチケットの販売を始めた。自社のホームページで売ればコミッションを節約できる上、この会社を子会社として登記すれば、節税にもなるからだ。こうして航空チケットや休暇を販売するサイトが次から次へと登場、とりわけ米国から大手のオンライン旅行代理店がドイツで販売を始めると、同氏が経営する会社"Unister"の業績は悪化した。売り上げを回復させるため、同社のホームページで航空チケットを買うと強制的に旅行保険を買わされて、これは最後のページで支払いをするまでわかなないようにした。さらには同社のサイトで休暇を申し込むと「100ユーロの商品券がもらえる。」という得点をつけて、客をおびき寄せたが、実際に支払うことはなかった。このような汚い方法を取ったことで消費者団体から非難されて、テレビで槍玉にあがると、同社の売り上げは上昇するどころか下落した。業績が悪化すると、同社の高いランニングコストは致命的で、借金は4000万ユーロ近にまで膨らんで、借金で首がまわらなくなった。会社の倒産を回避するため、ワーグナー氏は一か八かの賭けに出た。自称イスラエルからの投資家とイタリアのベニスで会うことにした。このイスラエル人は大型投資の担保として、氏、および会社の所有資産を要求した。ワーグナー氏はこれと引き換えに、鞄に詰まった現金を受け取った。

氏は何故、こんな危険な賭けに出たのだろう。それは同社の業績を知っている銀行からは、もう融資してもらえないからだ、そこで危ないデイールに賭けるしかなかったのだが、氏の命運はすでに尽きていた。自称イスラエル人が手渡した現金の大半は、偽札だったのだ!これに気が付いた氏はイタリアで警察に詐欺の届けを出したが、イタリアの警察は当面、何もできなかった。失意のワーグナー氏は証拠である偽札を積んで飛行機に乗り、ドイツに帰還する途上で墜落死した。運に見放されると、何をしてもうまくいかないといういい見本である。この事故で氏と一緒に会社を経営するパートナーも死去、"Unister"は経営陣を1日で失った。

飛行機事故から数日後、"Unister"は会社更生法の適用を申請した。"Fluege.de"、それに"Ab in den Urlaub.de"はまだ機能しており、相変わらず商品券を進呈!と宣伝しているが、会社が支払い不能になった今、商品券が現金化、あるいはこれを次の休暇で使用できる可能性はない。消費者団体によると、これらのサイトは航空チケットや休暇を仲介するだけで、契約は航空会社、旅行主催者と行われているので、"Unister"が客から受け取った金をちゃんと航空会社、旅行主催者に払っていれば、何も問題がないという。ただし倒産した会社が、今後も金を航空会社や旅行主催者に支払うと楽観しないほうがいい。又、同社が経営する旅行代理店、Unister Travel Betriebsgesellschaft GmbHも会社更生法の適用を申請した。この会社は旅行主催者だったので、ここが倒産するとすでに支払った休暇はおじゃんになる。もし同社が倒産に備えて保険に入っていれば、保険会社が同社に払い込んだお金を保証してくれる。

事件が事件だけに、「陰謀説」が誕生するには理想的な環境だ。イスラエルの投資家は実はマフィアで、証拠隠滅を企図して飛行機を墜落させたに始まって、墜落死したのはワーグナー氏ではなく、赤の他人、氏の身代わりに氏の書類を持たされて飛行機に乗せらされた。偽札に交換したのはワーグナー氏自身で、氏は本物の現金と一緒に逃亡、カリビックでのうのうとミリオネアの生活をしているという説。真実が何処にあるせよ、ウニスター社の倒産は明らかな事実なので、「あ、ここ安い!」と休暇や航空チケットを購入するのは危ない綱渡り。同社の借金額を考えれば次回の休暇費用として払うお金が、"Insolvenzmasse"(債務者へ返却される資金のプール)に消えてしまう可能性が高い。ご注意あれ。



まるでトラックに轢かれたようにペシャンコ。
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