テロ支援国家 (22.08.2016)

シリアやイラクでISの戦闘員としてテロ活動を行う外国人。西欧から来ている外国人も多いが、最も多い外国人戦闘員はモルジブから来ている。一体、何が理由でインド洋に浮かぶこのさんご礁からなる小さな国の若者が大挙して、そのような行動を起こすのか。旅行に行かれたことがあるなら、こんな貧しい国でも立派なモスルが建っているのを目にしたことがあるだろう。パキスタンなどの貧しい国にも、必ず立派なモスルが建っているが、「一体、どこからこんな大金が?」と考えたことはないだろうか。モスル建設の金は産油国であり、イスラム教原理主義の守護国であるサウジアラビアから出ている。それだけなら結構なことだが、サウジはモスル建設の条件として宣教師も派遣してくる。この宣教師は西側の文化を悪の象徴として説教、イスラム国などに加わって本当のイスラム教(スンニ派)の世界制覇に貢献するように呼びかけている。

日本でそんな呼びかけをしても、それほど効果はない。日本人の平均生活レベルは高く、贅沢を知っているので、これを犠牲にしてイスラムの為に死にたいと考える人は少ない。ところが貧しいモルジブでは、唯一の収入源である観光業に従事しているのは、わずか一部の島民だけだ。残りの島民は貧しさの中で生きている。ガラパゴス諸島のように隔離された世界で生きている人間が、イスラムの立派な宣教師の話を聞くとイチコロだ。こうして若者は原理主義思想に染まり、多くの若者がイスラム国に参加している。観光で生きているこの国はイメージの悪化を懸念して、国内での取材を禁止している。この国の人間が大量にシリアやイラクの民間人を虐殺しており、そしてモルジブに帰還したかっての戦闘員が同様のテロを犯しかねないと観光客にばれてしまっては、「モルジブに行きたい。」という人は増えないだから、無理もない。

イスラム国のようなテロ組織が大規模に活動するには、人員の他、武器、物資の補給、そして金がいる。世界中にあるモスルでサウジから派遣された宣教師が西側をスケープゴードにしているので、これを信じて戦闘員になりたい若者は次々にやってくる。金はサウジやその周辺のお金持ちのスンニ派の産油国から仕送りされてくる。が、どうやって武器や物資を補給しているのか。去年、トルコがロシアの戦闘機を地対空ロケットで撃墜した際、プーチン大統領はトルコはイスラム国を武器、物資、そして人員の面で支援していると非難した。エルドガン大統領は、「証拠を見せろ。」と要求した。その後、トルコのジャーナリストがトルコ政府がイスラム国向け送ってる救援物資の中に武器を発見、紙面で報道した。エルドガン大統領はこの暴露に激怒して、この記事を載せた新聞社の社長を反逆罪で逮捕されるなど、まるで日本の大逆事件のような反応をした。

実際の所、米国、英国、フランスやドイツでもトルコがイスラム国を支援しているのは、「公然の秘密」となっている。2年前にトルコ国境の町、コバニがイスラム国に包囲された。西側は空爆を強化したかったが、トルコ政府はトルコ内の空軍基地を爆撃に使用することを禁止しただけではなく、トルコの領空を通過することさえ禁止した。そこで戦闘機は空母から発進して、爆撃目標まで数時間も長距離飛行を余儀なくされた。それでも支援にやってきたクルド人の兵士の活躍で、イスラム国をコバニから追い出すことに成功した。戦闘後、クルド人兵士は正面から攻撃してくるイスラム国に加え、本来は安全な背面であるトルコ国境から戦車攻撃があり、二面攻撃にさらされたと語った。そしてトルコ政府は、今でもコバニ復興のための資材、薬、食料をコバニに運び込むことを禁止している。

こうした否定でない事実があるが、トルコは西側にとってNato加盟国で対ロシアの要害である。ここでトルコをイスラム国支援の廉で非難すると、トルコをまんまとロシアの腕の中に引き渡すことになりかねない。西側のこのジレンマをよくわかっているトルコは、各国からやってくるイスラム国の戦闘員を空港や国境で受け入れ、トルコ国境をまたいでイスラム国支配地域への自由に行き来を可能にしている。戦闘員が負傷すれば、トルコの病院で治療を受けて、またシリアとイラクに送り返している。イスラム国が産油施設を手に入れると、原油を買い上げて、資金源を確保してやった。そして武器の補充が必要になると、トラック数十台を使ってイスラム国に提供している。そうでもなければ、イスラム国のような組織が長期間、戦闘行為を続けることは不可能だ。

何故、トルコ、エルドガン大統領はイスラム国をそこまでして支援しているのか。それはトルコはイスラム原理主義のスンニ派の国だからだ。トルコの目標はサウジと同じく、インドネシアからアフリカそして欧州まで、スンニ派の制覇を目指している。この目の敵がシーア派のイラク、イランだ。シリアは本来、原理主義派のスンニ派の国なのに、独裁者のアサド家がシーア派のため、少数派のシーア派が国を支配している。これが気に入らないトルコ、サウジなどのスンニ派は、なんとかしてアサドを権力の座から引きずりおろしたい。アサドさえいなくなれば、スンニ派が多数派なので、シリアは自然にスンニ派の支配下に落ちる。この目標に達成するため、トルコはイスラム国を支援している。そして西側は指を銜えて、これを眺めることしかできない。

ところがミスというのは、必ず起きるものだ。ドイツの左翼党の議員が、内務省にトルコのイスラム国への支援について知っている情報を明かすように要求した。内務省はドイツの諜報機関、"BND"が集めた情報を保有しているが、その情報の種類によって、これを議員に渡す前に外務省などに連絡して了解を得る必要がある。ところが担当の職員が夏休み中のせいか、この繊細な取り扱いを必要とする情報が、外務省の了解を取ることなく、議員に渡されてしまった。そこには、「トルコはテロ支援のプラットフォームになっており、その指示はエルドガン大統領から直接出ている。」と、これ以上白黒はっきりさせうようがないほどに、トルコとその大統領のテロへの関わりが報告されていた。皆までいえばこの報告書は、「議員の閲覧専用」と「秘」扱いにはなっていたが、「あっ!」という間にプレスに漏れた。そしてドイツのメデイアはこれを隠さずに、一斉に報道した。

リオでオリンピックを観戦していた内務省の次官は、この情報漏れについて聞かれると、「まさか情報を抑えるわけにもいかないだろう。」とまだ余裕のあるコメントをしていたが、ベルリンでは大騒ぎだった。ドイツの内務省がエルドガン大統領のテロ支援を公に認めてしまったからだ。この情報漏れについてコメントを求められた報道官は、「この情報は"staatswohl"(国家の安全)に関わるものなので、コメントはできない。」とコメントを拒否した。翌日、ベルリンで内務省と外務省が一緒に記者会見を開いた。内務省は今度は素直に誤りを認め、外務省は、「トルコは欧州の大事なパートナーである。」と何度も何度も繰り返したが、すでに種は蒔かれた後だった。悪行を暴露されたエルドガン大統領は激怒して、トルコの国営放送(もう自由な報道機関はない)でドイツを攻撃、ドイツとトルコの関係は新たな底辺に達した。

日本政府は、トルコは言うに及ばずテロ支援国に毎年、多額の支援をおこなっている。そんな金があるなら、支援の条件をテロ国家への援助停止を条件にして、テロ支援国家に圧力をかけるべきだ。アラブ首長国連邦のカターはイスラム国家を財政的に支援していたが、「ISを支援するなら、ドイツへの投資は受け入れられない。」とドイツ政府からイエローカードを提示されて、財政支援を停止した。難民も受け入れず、蚊帳の外で傍観しているだけの日本は、せめてそのくらいの外交努力はすべきだろう。そして日本でテロ支援国の実情が報道されれば、そんな国へいく観光客の数が減り、圧力をかける武器になる。報道の自由を謳っているなら、日本のテレビ局は「アラブ連邦はお金持ちの国です。」などという安っぽい番組を放映するのではなく、こうした事実も報道すべきだ。


テロ支援国家
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