Reichsbürger (20.02.2017)

今回は「変わった人」の話。「変わった人」といっても、外見が変わっているのではなく、頭の中が変わっている人。「日本にも変わった人は居ます。」と思われるだろうが、その数、種類、程度では、個人主義の西欧とは比較にならない。欧米、あるいは日本の一部でも根強い人気があるのは、ユダヤ人陰謀説。休暇先の朝食のテーブルで、米国在住のドイツ人と暇つぶしの会話をしたことがある。お互い一人旅で退屈していたので話が長くなり、「来週はカンボジアに遠征だ。」と言うと、いきなり目つきが変わり、「(数百万人を殺害した)クメール ルージュの正体を知っているか。」と聞いてくる。"Make me clever."と冗談で返すと、「ポルポトはユダヤ人だった。」という。彼曰く、世界で起きる残虐行為はユダヤ人が書いたシナリオを、その忠実な僕が実行しているが故に起きているという。

こうした人を"Verschwörungstheoretiker"陰謀説家と呼ぶ。米国のアポロ計画は月面に着陸しないで、隠された倉庫で撮影されたという害のないものから、米国で起きたテロは米国政府が計画実行したものであるという主張。この病気がひどくなると政府は宇宙人と契約を結んでおり、未知の技術提供を受ける代わりに人体実験を許可しているなど、想像力は尽きることがない。こうした陰謀説に共通しているのは、この説を裏付ける証拠、データが全く存在していないこと。逆に言えばデータで裏づけされてない主張なので、これをデータで反論することもできない。一体誰が、日本の政府が宇宙人と契約を結んでいないことを証明できるだろう。こうして陰謀説は絶える事がなく、何か事件がおきる度に新しい陰謀説が生まれている。

ドイツにもこの陰謀説家が多い。外国人を見かけると、「真実を教えてあげなくっちゃ。」という使命感に駆られているからか、聞きたくないのに勝手に話をしてくる。陰謀説家はいつも決まって、上述の米国在住のドイツ人のように、「お前は○○を知っているか。」という言葉で話しを始める。ドイツではとりわけ、「誰が戦争を始めたのか、お前は知っているか。」、「誰がヒトラーを支援したのかお前は知っているか。」それに、「誰が世界(政治)を動かしているかお前は知っているのか。」が人気のトップ3だ。"Mache mich klug."(賢くしてくれ。)というと、相好を崩して夢にも見なかった話を聞かせてくれる。陰謀説家によると、米英はドイツを潰すことを長期的な目標にしているという。これを実行に移すため、ドイツ国内で特定の政治家を支援して権力に就かせ、戦争に発展させる。こうすることでドイツを潰す大義がえら得るという、ひにくれた論理だ。

こうした陰謀説の一種で、ドイツ(それにオーストリア)で人気の変わった説が存在している。それは、「ドイツ帝国存在説」で、現在のドイツ連邦共和国はただの有限会社(GmbH)に過ぎないという内容だ。そのような説を信じているドイツ人は、大きく分けて2種類に分離される。ひとつは何処の国にもいる右翼で、ユダヤ人殺害を否定、強大だったドイツ帝国に羨望を抱き、これが消滅したことを認めたくない人達だ。もう一方のグループは人生で大きな挫折を経験した挙句、その責任を自身に求めず周囲に転化、「ドイツ連邦共和国は認めないから、その法律、指図にも従わない。」という人だ。この屁理屈はドイツ人らしく徹底しており、ドイツ帝国の国旗は言うに及ばず、専用のパスポートまで勝手に発行、自身を"Reichsbürger"(帝国市民)と呼び、車のナンバープレートも独自のものを作成している。

ドイツやオーストリアに来て、おかしな旗を掲げているドイツ人や、玄関に「ドイツ帝国領」などというおかしな表札を掲げている帝国市民を見たら、「コレ、何ですか。」なんて聞かないで、大きく迂回しよう。バイエルン州はニュルンベルクの近郊に住む帝国市民が、自宅に武器を保有していた。当初は合法に所有したのだが、病気(帝国市民病)がひどくなったため、自治体は武器を保有させるのは危険と判断、武器を明け渡すように書面で警告した。しかしすでに病気が進行した帝国市民は市の役人を、「武器を取り上げるなら実力行使する。」と脅した。そこで警察の特殊部隊"SEK"に、この市民の自宅を強制捜査、武器を押収するように命じた。しかし何故か突入部隊には、「この帝国市民はマジでおかしい。」という警告が伝わっていなかった。ただの家宅捜査と勘違いした警察官が呼び鈴を、「ピンポ~ン」と押すと、帝国市民は玄関のドア越しに何の警告もなく発砲した。それも弾奏が空になるまで。結果、複数の警察官は大怪我をして病院で手当てを受けたが、1名は死亡した

その後の警察内部の調査で、警察内部に複数の帝国市民が勤務しており、同僚である筈の警察官に、「銃撃になる可能性がある。」という大事な警告をしなかったことが判明した。警察はこの帝国市民の警察官(複数)を解職処分にして、警察官殺害事件への加担で操作を始めた。この事件は、これまでは「頭のおかしな奴。」で済んでいた帝国市民の危険性をはっきりと示した。内務大臣は、「ドイツ連邦共和国を拒否するなら、国から1ぺニッヒさえも支給されないし、警察、軍、そして公の職には就けない。」と声明を出して、帝国市民の解職に乗り出している。バイエルン州の内務大臣によると、バイエルン州だけで最低でも1700名にも及ぶ帝国市民が居り、さらなる1600名は識別中であるという。今後、帝国市民は憲法保護の監視下に置かれて、電話などは盗聴されるので、お友達を選ぶ際はご注意あれ。


          
この旗見たら要注意。
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