欠陥機  (03.03.2017)

いつも話題を提供してくれるエアバス社(旧EADS)。今回はここで何度も取り上げている軍事輸送機、A400Mの続編だ。この前、ここで取り上げたのが2年前。「そろそろ問題を解決しただろう。」と思いそうだが、そこはエアバス社、未だに問題を抱えている。それも同じ問題を。

60年代に導入された軍事輸送機Transall C-160。独仏の共同事業で、エアバスではなく、独仏の航空機メーカーが生産した。お陰で大きなトラブルもなく、信用性も高く、ルフトハンザは軍事用途に開発されたこの輸送機を民間用として注文したほど、よく出来た輸送機だった。しかし導入から20年も経つと、「近い将来、次世代の輸送機が必要になる。」と軍需産業は会合、将来の入札に向けて共同で軍事輸送機を開発する協定を結んだのが1982年だ。その後、最初の試作機が製造されたたのが1994年。

不幸なことに、ここでかってのEADS社がこの飛行機の開発を引き継ぐことになった。EADS社は、同社の名前と値段の載ってるパンフレットを刷って、「買ってくださいな。」と欧州、トルコ、アジアでセールを開始した。2003年までに同社は180機の生産受注を受けたが、まだ設計の段階。製造ラインも何も出来ていなかった。にもかかわらず、「2008年には製造を開始できる。」と豪語した。案の定、生産開始は1年遅れ、2009年に組み立てが始まり、やっと試験飛行が始まった。エアバス社は、「2010年には最初の機体をフランス空軍に納入できる。」と豪語した。

ところが同機は大きな問題を抱えて開発費がうなぎ登り、エアバス社は注文をした各国を、「値上げを受け入れてくれないと、生産をやめる。」と脅した。大株主であるフランスとドイツはこれに応じたが、他の国はそう簡単にはいかなかった。国防大臣に賄賂を贈るなどの工作の結果、なんとか値段交渉を乗り切ったが、最初の機体は3年遅れで2013年にフランス空軍に納入された。しかし生産をしながら、同時に欠陥を補正していくため遅延が生じ、ドイツ空軍に納入されるA400Mは毎年5機ではなく、2機に減らされた。そして2015年にはここで紹介した通り、納入前の試験飛行で墜落、乗組員が死亡した。

A400Mの最大の、そして終わることのない問題は、そのエンジンにある。「舗装された滑走路を必要としない。」という売り文句のためプロペラエンジンを採用したが、プロペラ エンジンでは計画したパワーが出なかった。そこで同社は買い主に約束した最大積載用を減らし、なんとか輸送機を飛ばそうとしたが、今度はエンジン内部で亀裂が発見された。同社はエンジンの総合点検を最初の500Kmの飛行で行うようにマニュアルを変更、その後は250Kmごとに点検が必要とした。250Kmで総点検が必要になる車なら、誰も買わないだろう。しかしこれは車ではなく、長距離飛行をする輸送機なのだ。250Kmでエンジンの総合点検が必要になる輸送機に、どんな価値があるだろう。これでは軍事作戦、支援に全く使えない。エアバス社は新しい航空機を開発する際の鉄則、「せめてエンジンだけは、すでに機能が証明されている既存のものを使う。」を無視したため、この有様だ。

「値段が上昇する一方で、その飛行機自体は飛び立つことがない。」と散々の酷評をいただいたエアバスの宣伝に、国防大臣は自ら一役買って出ることにした。リトアニアで開催されるNato加盟国会議への出席にA400Mを使用して、「この輸送機は実用できる。」とわが身をもって示威したかった。ところがリトアニアに到着後、エンジンが(また)故障した。ドイツ空軍は国防大臣を連れ帰るため、導入から50年近くたつTransall C-160を派遣して、この機は大臣を無事連れ帰った。故障のA400Mは、ドイツ空軍が現地に部品を運び込み修理中だ。

納入が遅れ、約束した機能も発揮できないA400Mに対して、「契約違反だ。」と購入国から損害賠償を要求する声が高くなった。同社は2016年の決算報告で、同機の修理のために22億ユーロもの大金を見積もっていると発表、同社の儲けは2015年と比較して10億ユーロも減額した。この修理(予想)額には、購入国への契約違反金は含まれていない。購入国が契約で正当に認められている契約違反金の支払いを要求すると、エアバス社は法律上、これを払う義務があり、同社の2017年度の会計は赤字にさえなりかねない。そこで、「契約違反金の要求は控えるべきだ。」と同社のロビイストを各国に派遣、賄賂を贈ってご機嫌を取る事に余念がない。
          
同社の工事現場はA400Mだけではない。オーストリアへの"Eurofighter"納入でふんだんに賄賂を贈ったため、同社は収賄でオーストリアから訴えられてしまった。エアバス社は払った賄賂の費用を回収するために、オーストリア政府に水増し請求書をしていいたのだ。その額や驚きで、ナット一個がなんと3000ユーロ。オーストリア空軍には、「純正部品を使用すること。」という規定があり、このべらぼうに高い部品を使用せざるをえなかった。まるで暴力団だ。

それだけでは問題は収まらず、同社が開発した世界最大の旅客機、A380は値段が高すぎて注文のキャンセルばかりが入ってきている。お陰でこれまで納入されたのは138機で、これでは開発コストさせも回収できておらず、この飛行機はデカイ赤字を生む結果になっている。まだ318機の注文が残っているが、今後もキャンセルが続けば同社は生産を終了して、空いている組み立て工場を他の儲かる航空機の組み立てに使用せざるを得ない。民間の企業なら無能な経営陣は刷新されるが、国が経営に参加しているため、政治家への賄賂で急場をしのぎ、癌の巣窟が削除される事がない。これが国有企業の宿命だ。


墜落中ではありません。ショーです。
592.jpg


編集後記
数日前、フランスで航空メッセがあり、日本の三菱も含めて各社は売り込みに必死だった。このメッセを取材した日本の記者は、「燃料を節約するエアバスの新型機 A320 neoは早くもベストセラーに.。」と紹介していた。これが典型的な日本の報道で、せっかくフランスまで特派員を派遣しているのに、突っ込んだ取材をしない。「じゃ、突っ込んだ取材をするとどうなるの?」ということになるわけだが、この新型機に搭載されるエンジンは大きな問題を抱えている。この新しく開発されたエンジンが燃料を節約する筈なのだが、設計上のミスと十分にテストをしなかったお陰で、納入してからトラブルが多発している。最初に納入された飛行機ではエンジンが爆発した。航空会社はこの機の導入は危険と判断、新型機は格納庫で埃をかぶっている。勿論、契約の破棄を求めてエアバスと交渉中だ。この事件以降、エアバスは飛行機が離陸する前にエンジンを3分間始動させて、エンジンを温めるように指示を出した。これをしないと繊細な羽が壊れてしまうのだ。加えてエンジンが故障していないかチェックが欠かせず、フライト事に1000ユーロのコストが余計にかかっている。

さらにはエンジンの欠陥により、エンジンの製造、納入に遅延が生じている。エンジンが届かないので組み立てられないA320ネオが組立工場に所狭しと並んでおり、納入時期も大幅に遅れている。このため航空会社は、「ネオでなくてもいいから。」とこれまで通りのエンジンを搭載した飛行機に注文を変更している。そんな大事なことも取材、報道しないで、「ベストセラーです。凄いですね。」でお給料が貰えるのだから、日本の報道機関は凄い。
スポンサーサイト

0 Comments

Post a comment