新旧入れ替わり  (29.03.2017)

2016年9月、ドイツ鉄道の社長のGrube氏はジーメンスから納入された最新型のICE車両「4型」をプレスに紹介した。2010年に注文を出してから、トラブルに続くトラブルで納入時期は大きく遅れた。当時、「納入は2013年冬になるだろう。」と悲観的な見方をしていたが、それよりもさらに3年も遅れるなんて、一体、誰が予想できだだろう。新車両の紹介では社長もニコニコ顔で過去の事は水に流して、「この車両はドイツ鉄道の新しい章を書く事になる。」と大いにご機嫌だった。本人はまだこの時点では知らなかったが、数ヵ月後、まさしくこの言葉が現実化することになる。

日本で新しい新幹線が導入されると、まず形がこれまでのモデルと大きく異なり、最高速度はこれまでと同じか、旧型を凌駕することが少ないない。外見に拘らないドイツ人らしく、ジーメンスが製造した新型は旧型をほぼ同じデザイン。わずかに正面のライトがLEDになっているのが唯一の違いだ。そして日本人なら外見以上に拘る最高速度だが、新型は250km/hと旧型よりも遅い。ドイツ鉄道は最高速度よりも経済性を優先した。乗客を一人頭、どれだけ安く移送できるかに重点を置いたのは、いかにもドイツ人らしい。日本の新幹線と違いドイツでは高速電車は従来の電車の路線を走行するので、最高速度を上げてもこれを利用できるのはごく一部の区間のみ。また最高速度を出すと電気の消費量が上昇して、経済性が悪くなる。ドイツ鉄道はドイツ人らしく、「そんなみかけの優位線は要らない。」と判断した。

その代わりにドイツ鉄道がジーメンスに要求したのはクーラー。日本なら当たり前だが、夏でも暖かくなることの少ないドイツでは、クーラーは貴重品。ドイツの電車ではクーラーは、気温が30度くらいまでしか想定してない。これを超えるとクーラーが機能ダウン、車両は蒸し風呂になり乗客がばたばたを気を失った。救急車が出動する大騒ぎになるとドイツ鉄道のイメージダウンになったので、この機会に気温が30度を超えてもちゃんと機能するクーラーを装備している。そしてこれまた日本では当たり前になっている案内表示のモニターが装備される。そして、「荷物を置く場所が少なすぎる。」という客の苦情をやっと聞いて、わずかながら大きな旅行鞄を越えるスペースを拡大した。

日本の新幹線にない機能では、まず自転車が持っていけるようになった(自転車用のチケットが必要です)。そして身体障害者のために、車椅子に乗ったまま電車に乗り降りできるスロープを装備、電車が停車するとスロープが延びる仕組みだ。社内も車椅子が走行できるスペースを確保しており、これは(多分)日本にはまだない社会的弱者へのサービスだ。そして誰もが待ち望んでいたサービス、Wifiもついに装備され、二等車でも無償で利用できる。もっともサービスを利用するのはドイツ語、あるいは英語で登録が必要だ。速度は300kbpsまで。データの転送量が200MBを超えると、スピードがかなり制限されるので、動画の視聴は避けた方が件名だ。詳細はこちらをご覧ください。

この新しいICEはハンブルクからハノーファー、そしてニュンベルクからミュンヘン間を試験走行している。2017年の11月まで乗客を乗せて走行テスト、大きな問題がなければ12月から順次、ドイツ全土に導入される。もっともジーメンスに注文されたのは130もの車両なので、すべての車両が新車両に入れ替わるのは2023年までかかる。だから「ICEに乗ればWifiが無料で利用できると書いているのに、できなかった!」ということもあります。その場合の苦情はこの記事の著者ではなく、ドイツ鉄道までお願いいたします。

国営のドイツ鉄道は、2015年に大きな赤字を出した。2016年では黒字を出したが、長距離路線で長距離バスに客を奪われて、乗客数が減少している。そこでドイツ鉄道はこの新しい電車で乗客をバスから取り戻し、会社の採算性の改善を期待している。社長のグルーベ氏は、前任者がドイツ鉄道の民営化、株式上場を目指して会社の設備投資を怠り、欠陥鉄道になった会社の厚生を目指して、幾つかの成果を上げることに成功した。会社の持ち主である国も社長の仕事ぶりに満足しており、グルーベ氏の任期は延長される筈だった。実際、任期延長の役員会議に出向くグルーベ氏は、とてもご機嫌で、契約書にサインするのは待ちきれない様子だった。

ところがドイツ鉄道は役員会議の終了後、同氏の任期延長ではなく、同氏が社長を辞任したことを告げた。運輸大臣もこれには大きく驚いて、「まだ詳しい事情を把握していないので、コメントできない。」と、記者団から逃げ出した。後から報道された話では、グルーベ氏は3年の任期延長で、会社側と事前に同意に達していた。ところが会社側が提示してきたのは、3年ではなく、2年の任期延長の提案だった。一言も相談なく、事前に決めていた内容を、契約の場面で急に変えるなんてひどい。グルーベ氏はこれを会社側の同氏の能力に対する信用欠如、侮辱と解釈した。そして怒りの余り、その場で社長を辞任してしまった
          
ドイツ鉄道には、前任者が残した大きな工事現場、"Stuttgart21"が残っている。シュトットガルト駅を地下に移して、駅前の交通の流れを改善しようと始めた工事だが、工事費がうなぎのぼり。ドイツ鉄道は住民の反対に面して、「工事費は上昇しない。」と約束して工事を始めただけに、大きな問題になっている。ドイツ鉄道はシュトットガルト市に工事負担金の追加を要請したが、市は契約内容を理由にこれを拒否。ドイツ鉄道はシュトットガルト市を訴えて、工事費をださせようと画策が続いている。この大きな工事現場をグルーベ氏は残したまま、会社を去ることになった。その日のニュースでドイツのメデイアは、「グルーベ氏は大きな穴(ドイツ語でグルーベ)を残したまま、社長を辞任した。」と報道した。


祝!ネット接続。

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ただし、とっても遅かったです。



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