今度は本当に有料化? (15.04.2017)

4年前の選挙戦でメルケル首相は(後で有名になる言葉)、"Mit mir wird es keine Pkw-Maut geben."(私が選挙に勝てば、自家用車に高速料金は導入しない。)と語った。この言葉で選挙民を安心させて選挙に勝つと、「自家用車に対して高速の料金を導入する。」と、ころりと手のひらを返した。勿論、ドイツ人は「破られた公約」に腹を立てたが、間抜けなことにメルケル首相はすでに選挙に勝ってしまった後。選挙民は、「また騙された!」と、地団駄を踏んだ。一体、何度騙されたらわかるのだろう。

メルケル首相の良心は、それでもちょっぴり痛んだらしい。そこで「高速使用料の引き換えに、自動車税を減額することで費用負担を相殺する。」と苦い薬をオブタートで包んで飲みやすくした。4~5年後、この自動車税の軽減を取り消せば、政府には新しい財源が誕生することになる。忘れっぽい大衆は、気づきもしないだろう。ところがこの導入方法では、外国人だけ高速使用料を払うことになる。別の言い方をすればドイツ国民だけ優先する料金の導入は、「欧州加盟国の国民を差別してはならない。」というEUの大原則に抵触した。お陰で首相は高速料金の導入を閣議決定したにもかかわらず、導入されることなくして棚上げになってしまった。欧州委員会の反対があるのに法案を導入すると、でかい罰金を課せられるからだ。とりわけ首相の反対を押し切って、高速料金導入を連立政権の協定書に書き込むことに成功したドブリント交通大臣にとっては、大きな敗北だった。以来、ドブリント氏はこの法令のカムバックを目指して、欧州委員会と交渉を続けてきた。

同氏の忍耐の甲斐があって、欧州委員会は「他の欧州加盟国民を大きく差別しないなら、有り得る。」と妥協のシグナルを出してきた。そこでドブリント氏はなんとか面子を救って次期の政権でも大臣の椅子をもらおうと、高速料金の導入に政治生命を賭けた。そして出来上がった高速料金導入案では外国人に対する料金が半額にされており、「これじゃ導入にかかる手数料の方が、高速料金の収入よりも高い。」と非難されることになった。政治生命がかかっている交通大臣は、「いやいや、ちゃんと黒字になりますよ。」と言い張ったが、同大臣が提出したプランでは、外国人の数が多めに計算されており、本来の目的、「高速料金を徴収して、道路の整備に使う。」には役に立ちそうになかった。

この法律案は、「費用がかかるだけで、実収入ゼロ。」という野党の反対むなしく、下院で可決されてしまったので、今年中にいよいよ高速道路の有料化が現実のものとなりそうだ。肝心の使用料だが、"Maut"(高速料金)について報道しているメデイアによると、最大で130ユーロかかるそうだが、「普通の人」なら年間74ユーロで納まるそうだ。この料金は上述の通り、自動車税から減額されるという約束だ。外国人の場合は、10日券が2.5ユーロ、年間では20ユーロなので、それほど大きな負担にはならない。

にもかかわらずドイツの周辺国、とりわけオランダとオーストリアはこの料金を"Ausländermaut"(外国人料金)と呼び、「決して受け入れない。」と徹底抗戦の構えだ。両国政府は欧州裁判所に訴えるといきまいており、本当にこれを実行に移す場合、ドブリント氏の政治生命がかかっている高速の有料化は、裁判結果が出るまで棚上げになる可能性も出てきた。この法令が違法と判断された場合、交通大臣の面子は丸潰れだ。さらには高速の有料化でお金を稼ぐ筈だったのに、「裁判結果が出るまで導入お預け」では、財務大臣のショイブレ氏がご機嫌斜めだ。来年度の予算にこの収入を見込んでもいいのか、予想がつかない。現時点では高速料金導入が予定通り施行されるか、まだ予断を許さない。

編集後記
高速有料化の実現への抵抗は、思わぬ方向からやってきた。下院で可決されたこの法案、法律になるべく上院に送られたが、上院で過半数を得られなかった。オーストリア、スイス、オランダ、そしておフランスからドイツにお買い物に来る人で儲かっている国境にある州が、「国境周辺は例外(無料)にすべきだ。」と法律の改正要求しているからだ。中央政府は、「例外なし。」と妥協を拒否、こうしてこの法案は、他の数百の法案と同じく、可決を待っている法案の倉庫に永久保存されることになった。実にドイツらしい。


ドブリント氏、そして高速道路有料化の運命は?
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