U-31 & U-32 (20.10.2005)

2005年10月19日にドイツ海軍は新しい潜水艦、U-31とU-32をドイツが誇る鉄鋼&軍需産業のThyssen Krupp社から納入した。値段は一隻邦貨にして400億円。全部で4隻注文したから、全部で2000億円もの大変なお買い物である。ドイツの今の台所事情を知っている者なら、「国庫が空っぽで、国民に払う年金さえも底をついて、借金を借金(国債の発行)によって払っている政府がなんでそんなばかげた買い物をするのか?」と思ってしまう。一体、何が理由でこの平和時、かつ財政事情が厳しい時期に大型装備の導入を決定したのだろう。何か、理由があっての事に違いない。

今回装備されるのは新生代の潜水艦、なんと水素推進である。自動車業界では次世代のエンジンとして研究されているが、世界で始めて軍事部門で水素推進採用されたのがこの潜水艦だ。ご存知の通り第二次大戦中、ドイツの潜水艦はデーゼルエンジン駆動であった為、一旦、海中にもぐってしまうとエンジンをかける事ができず、電気モーターでゆっくりと、しかしかも電池が切れるまでのわずかな時間しか動けなかった。この為、連合軍の駆逐艦に水雷攻撃され、ドイツ海軍の全潜水艦乗務員の2/3が戦死するという悲運に見舞われた。戦後、核推進の潜水艦が出て、潜水艦の重要性が増したが、核武装を嫌うドイツでは大戦中の悲劇にもかかわらず、20世紀が終わるまでずっと伝統に従ってデーゼルエンジンの潜水艦を建造し続けていた。しかしそこはドイツの執念か、密かにデーゼルに変わる推進方法を研究してきた。そして21世紀になってやっと悲願が達成したわけである。

水素推進のエンジンは浮上する必要がないので発見されにくく、海中でも高¥速度で推進可能なので駆逐艦の標的にもなりにくい。唯一の難点は、この冷戦を想定した潜水艦は、冷戦が終結が終結した今日、ドイツ海軍には必ずしも必要ではない事。しかし、ドイツ政府が一旦注文したものを「やっぱり、要らない。」と、いうわけにはいかない。そこで今回、国庫が空なのに購入にいたったわけだが、本当の理由は別のところにある。

それはこの潜水艦を紛争中の国に輸出する事だ。核推進の潜水艦は30年もしたら解体する必要があるが、そう簡単にはいかない上、これには大変な金がかかる。それより前に、核推進の潜水艦は国家機密だから、誰も売ってくれない。だからこれまでは潜水艦商売は、時代遅れのデーゼルエンジン駆動に限られていた。ここにドイツの新型潜水艦の意味がある。核不拡散条約に反しないこの潜水艦は、ドイツ政府の一存で輸出可能なのである。表向きは紛争、戦争を非難しておきながら、その裏では係争国に最新の武器を輸出して大儲けをするドイツのプラグマテイズムを、日本の政治家にも期待したい。

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Thyssen Krupp社で行われた完成式典


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U-31の進水式 トリコロールで飾られているのは何故?


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