最後に笑う者 (30.05.05)

ドイツ語で "Wer zu letzt lacht, lacht am meisten."と言う。意訳すれば、「最後に笑ったものが、勝ち。」という事になる。この言葉がぴったり当てはまる政治劇がドイツの最北端の州、Schleswig-Holstein州で起きた。
事の発端は、2005年3月に行なわれた地方選挙。Schleswig-Holstein州は、Nordrhein Westfalen州同様に、SPD(社会民主党)の権力基盤の州のひとつ。第一次大戦を敗戦に導いたキール軍港での水兵の反乱が起こったのもこの地であるから、伝統的にこの地方は左よりの州である。こうした背景を頼りに、戦後、SPDはほとんど権力を明け渡す事なく、この州を支配してきた。ところが戦後最大の大不況が荒れ狂うドイツ、特に経済基盤の弱いこの州では失業率は他の州よりも高く、州政府に対する不満は高まっていた。

選挙の前にはそれでもSPDが野党をわずかに世論調査でリードしていた。これは Schleswig-Holstein州のSPD党首、Heide Simonis 女史の個人的人気によるものであった。(ドイツでは女性政治家は男性より人気がある。)ところがいざ、投票日になると野党CDUが得票数をあれよあれよという間に伸ばし、その日最初の選挙速報では、CDUの過半数獲得が確実視され、早くもCDUは勝利宣言を行なってお祭り騒ぎが始まった。ところが、である。最後の投票箱が開けられて開票が進むとSPDがぐいぐいと劣勢を回復して、CDU とSPDは互いに連立政権相手を加えて、それぞれ議会で34席と33席というほぼ同じ得票数になってしまった。ちなみにこの州の議会で過半数を獲得するには35席が必要である。つまりCDUは過半数に1席、SPDは過半数に2席足りないという稀に見る大接戦。残る議席は2席。この2席は州に住むデンマーク人の極小政党が獲得した。結果として、選挙前は誰も知らなかったこの極小政党が選挙の行方を握る事になった。

この極小政党がSPDと連立政権を組む事を宣言した為、CDUは選挙で事実上勝って、州での第一党に躍進したににもかかわらず、政権を奪取できないというCDU にとってこの上なく「歯がゆい状況」が発生した。政権を担当する党は議会にて政権獲得の為の選挙を行い、実際に過半数を制している事を実証する必要がある。普通、これは形式だけの選挙で、それまでに下準備を行なっているから連立政権の申請、認可という運びになる。ところがである。
いざ、地方議会が開かれ、投票になり、得票数を数えてみるとSPDの得票数は過半数の35票あるはずなのに賛成票が34票しかないのである。この投票は同じ候補者で3度まで繰り返す事ができるが、何度やっても結果は同じ。どうしても1票たりないのである。Simonis女史に個人的に恨みをもつSPD議員が「今ぞ、復讐の時!」とばかりに反対票を投じたのである。しかも3度まで!このシーンはテレビ で一部始終放映され、Simonis党首の青ざめ、狼狽していく顔はドイツ全土に放映された。結果としてSPDはこの州にて過半数を獲得する事ができなくなり、第一党であるCDUに政権を譲る事になったのである。この責任を取ら されてか Simonis女史は党首から降格される。まさに映画のようなこの政治劇。政権が転がり込んで来たCDUはお祭り騒ぎであったが、この結果を一番堪能したのは誰だっただろう。 



099.jpg
政権を失い狼狽するSimonis女史

100.jpg
思ってもいなかった政権の獲得で笑いが止まらないCDU


スポンサーサイト

0 Comments

Post a comment