背水の陣 (23.05.2005)

5月22日にNordrhein-Westfalen州にて地方選挙が行なわれた。この州は(日本でも有名な)ルール工業地帯のある州で、ドイツの州の中でも最も人口の多い州である為、政党にとって最も重要な地方選挙である。さらにこの地方選挙に勝つとその後の全国選挙でも勝つというジンクスがあるので、各政党は選挙戦に全力を投入した。
元来、労働者が多いこの地域は社会民主党(SPD)の支持基盤であり過去39年間も政権を保持してきた。それもかかわらず選挙前の世論調査では、与党のSPDは野党に大きく遅れを取っていた。原因は言うまでもない、戦後最大の大不況である。特に炭鉱労働者の多いこの州では、のきなみ炭鉱が廃坑になり、かって炭鉱で栄えたGelsenkirchenの街などは『失業者の町』とまで悪口を言われるまでに状況が悪化、住民が町を離れて過疎化が進み、空き家の数が増え続けている。
選挙前のキャンペーンで野党の党首が口をすべらして、市民の笑いを誘ったりもしたが、選挙が終わってみると結果は選挙前の世論調査通り、野党の勝利となった。これで39年間も続いたSPDの最大の拠点が失われた。普通なら選挙に勝ったCDUの党首のインタビューが新聞のトップを飾るのだが、今回は少し事情が違った。選挙速報で与党大敗のニュースが伝わると、選挙に負けたシュタインブリュック知事は2006年に予定されていた全国選挙を前倒しして、今年の秋に行なうと発表したから、敗北宣言を当てにして会見に来ていた記者は久々の大ニュースに大喜び。
時を同じくして首相が記者会見を行い、正式に下院選挙をこの秋に行なうべく調整に入る事を宣言した。お陰で新聞、テレビなどメデイアの関心は、CDUの選挙の勝利から今年の秋に行なわれる全国選挙の話題に移転してしまい、選挙に勝利したCDUのお祝いムードと報道はすっかり隅においやられてしまった。この首相のメデイア操作の腕前にはたいしたもの。もし、この発表がなければ、党の惨敗の責任問題になっていただろう。しかしこの一言で、選挙の敗北の責任問題は一切口にされなかった。それどころか、メデイアの関心を選挙に勝ったCDUから、選挙に負けたSPDに転向させる事に成功している。
とは言うものの、何の根拠、理由があっては首相は選挙を前倒しにするのだろう。何か利益があるに違いない。しかし過去2年間、SPDは唯一の例外を除いて負けっぱなしである。どうみても、この秋までのこの傾向が突然逆流するとも思えない。
戦術では、企図の秘匿、奇襲が最も有効な手段とされている。野党は未だに誰を首相候補に上げるかさえ決まっていない。こから首相候補を決めて、それから全国選挙を戦う事になるので準備期間が短い。今年の秋に選挙なら、首相候補の名前を売る時間もあまりない。ここに今の首相は唯一の勝利のチャンスを見たようである。首相の人気と知名度を頼りに、相手の準備ができていない内に戦いに挑もうという戦略のようだ。2005年、背水の陣、一体どうなるか非常に楽しみである。



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NRW州選挙の敗北宣言を行なうシュタインブリュック氏

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NRWでの敗北を受けて、総選挙の前倒しを発表する首相


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