カムバック! (30.06.2005)

先のNRW州の地方選挙で歴史的な大敗を喫した政府与党が、2006年に予定されていた総選挙を2005年に前倒にする決定を下したことはすでにご紹介した通り。かといって、独裁政権下ならともかく、民主主義の国には憲法があるから簡単に、「選挙、前倒し決定!」といって、勝手に選挙を前倒しできるわけではない。総選挙を前倒しにする場合、政府が国会で過半数の不信任票を「獲得」する必要がある。この場合、ドイツの大統領は法にのとって総選挙を告示する事ができる。そこで首相は7月1日の信任投票で、不信任投票をするように党員に呼びかけるという、これまた通常では見られない光景が展開していた。政治に興味のある人は、この不信任投票の結果を日本で追ってみてはどうだろうか。

それはともかく、新選挙となれば選挙民を引き付ける魅力のある「公約」が必要になる。今まで散々、国民を愚弄してきただけに、政府与党に対する不満は高い。これに対処する為に政府は、政権を維持した暁には、「金持ち税」を導入して不足する税収入は一般大衆からではなく、金持ちから徴収すると宣言した。その同じ政府が2004年に高給取り(すなわち金持ち)に対する税率を下げたばかりだ。それを今度は1年もしないで、「金持ち税」を導入するというから、これほど己の失策を如実に物語る政策はないだろう。ここで政府与党はさらなる不幸に見舞われる。

既存のドイツの政党に不満な選挙民や労働組合が集まって作り上げた極小政党、Wahl-alternative und Soziale Gerechtigkeit、通称、WASGという誰も知らない党があった。シュレーダー首相の下院選挙前倒しで、資金力のないこの党は全く準備ができておらず、不意を疲れた。ここでSPDの元党首で、大蔵大臣に就任した経歴のある政治家のLafontaine氏が党員証を送り返して、この政党の党首に納まるることを宣言してしまったから、SPDはたまったものではない。ただでもSPDに投票する選挙民が激減しているのに、ラフォンテーヌ氏の復活で、同じ選挙層が2分される事になる。これ加えてラフォンテーヌ氏は、テレビで活躍して人気のあるかっての共産党最後のスター、Gisy氏と、つまりPDSと共同して、全国で候補者を挙げると宣言した。これを見SPDの党員は、沈没する船から逃げるねずみのように次々に新党に移っている。中には現職のSPD国会議員まで、SPDにサヨナラをして新党に移った。こうしてこの前までは誰も知らなかったWASGが、まだ選挙も始まっていないのに、国会に議員を獲得してしまった。

SPDの幹部は、「SPDは2度の世界大戦とHitler独裁を生き抜いた党だ。退職議員が、再度、立候補したくらいで党の基盤がゆらぐものではない。」と、威勢のいい声明をだしているが、今、ドイツで起こっているの現象は戦後最大の政界再編成になりかねない。政治に興味のある人は、この政党の動きに注目されたい。ドイツでは総選挙で最低5%の得票数をえられない党は国会に議員を送れない。こうして極右政党など極小政党が国会に侵入するのを防いでいる。果たしてWASGがこの5%の枠を超えて、国会に議員を送れるかどうか。今度の選挙は見所が目白押しだ。


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あだ名は小さなナポレオン。ドイツの政界の再編成を目指すLafontaine氏

  
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