Kaczynskis (19.10.2007)

その国の汚職度は、その国の権力者の親族がおいしい汁を吸っているかどうかで、かなり正確に知ることができる。例えば汚職度No1の独裁国家では、権力者の親戚、息子、兄弟が堂々と要職について、その権力が代々子孫に引き継がれて行く。汚職が日常茶飯事なアジア諸国では、権力者の家族が商売上の特権を利用して大儲けするケースが多い。ちょうど2006年のクーデターで首相の地位から追い出されたタイの首相などがいい例だ。民主主義が成長してくると、こうした汚職のケースは稀になるが、勿論、汚職が無くなることはなく、その方法が巧妙になるだけ。例えばドイツでは、バイエルン州にFranz Josef Straussという州知事が居た。アラブ諸国にコネのあるこの政治家は、ドイツ製の武器を輸出する際に、自分の(出来の悪い)息子をコンタクト先に指定、武器の取引が完了すると、息子の口座にコミッションが入ってくるように配慮してやった。ところが、武器を売ったドイツ人武器商人が収賄で起訴されると、良心のかけらもないこの死の商人は、自分の首を救う為に賄賂の送り先とその額面を記入していた手帳を税務署に送って、本人はカナダに高飛びしてしまった。(カナダとドイツの間では犯罪人の送還協定がない。)この結果、この政治家の息子は脱税容疑で訴えられてしまった。(賄賂でも収入には違いないので、これを申告しないと脱税であげられる。)

さて、ドイツの隣国、ポーランドでは面白い政治が行われている。なんと大統領と首相の要職が、Kaczynski(カチンスキー)兄弟(双子)で占められてしまっているのだ。かって米国でケネデイー兄弟が、国の要職についたことはあるが、双子の兄弟というのはギネスブック並み。そして、この双子は外見だけでなく、知能程度も同じ(低)レベルに加え、二人揃って右翼という実に危険な組み合わせ。大統領(首相)就任以来、面白い政治喜劇を提供してくれているので、是非、そのひとつを紹介したい。

6月にEU議会が開かれて、人口の異なるそれぞれのEU加盟国の投票権について話し合いが行われた。わかりやすく言えば、ドイツの一票は、ドイツ国民8000万人を代表しているが、ポーランドの一票は3800万人を代表しているに過ぎない。だから、すべての国を同じ一票とカウントしたのでは、不公平になる。そこでドイツはその人口に見合った「得票権」を要求した。これに我慢のならないのがポーランドを代表するカチンスキーだ。彼の言い分は、「ドイツが第二次大戦で650万ものポーランド人を殺害したのが、ポーランドの人口が少ない原因だ。そのドイツの一票がポーランドの一票の2倍の発言力を持つとはなんたる事か。ならばポーランドにはドイツに殺害された650万人の発言権を認められるべきである。」と(大真面目で)言い出した。

当然、こうした過去のテーマに関する発言、それが一国の首相(大統領)からなされたものであれば、ドイツではトップニュースで報道される。これを聞いた一般の(それほど教養のない)ドイツ人の怒りは激しく、「文句があるなら、もう一回やってやろうじゃないか。」と、ドイツ-ポーランド関係は第二次大戦会戦前夜の雰囲気を醸し出した。

カチンスキー兄弟の意見は、潜在的なポーランド人の愛国心と、ドイツに対する敵愾心を奮い起こしたようで、ポーランド国民は大方、首相の提案に賛成した。もしドイツの首相が、これまた右翼だったら、また戦争になったかもしれないが、幸い、ドイツの首相は物分りのいいメルケル女史。辛抱強い(賢い)母が、思慮のない息子の言い分に耳を傾けるように、話をじっと聞いてから、カチンスキーを諭してしまった。これに我慢のならないのが、ポーランドの世論。やっとポーランドの権利を声高に要求してくれる政治家が現れたと思ったら、よりによってドイツ人のメルケル首相に説得されてしまったのだから、Kaczynski兄弟に対する失望は大きかった。そこで翌週のポーランドの週刊誌には、右図のような表紙が掲載された。

この雑誌がされると、(一般の)ドイツ人は(また)怒り狂った。その週は、どこに行っても、ポーランド人をけなす言葉しか聞かれなかった。 きっと、ドイツに住むポーランド人は肩身の狭い思いをしたことだろう。これとは逆に、メルケル首相を初めとして教養のあるドイツ人は、この一件を聞き流すだけの余裕、分別を持っていたのには感心した。我々、日本人は似た様な過去の経験を持つだけに、似たような事件が起こった際には、日本の政治家にもメルケル首相のような賢い対応を期待したいものだ。

尚、10月21日ポーランドで投票が行われ、カチンスキー率いる右翼政党が大敗を喫した。ポーランド国民も「カチンスキー首相にこれ以上、国を代表されたのではポーランドの恥。」と痛感したようで、対立候補のTusk氏が雪崩式に得票数を伸ばし、選挙に勝利した。Tusk氏はカチンスキー氏とはまるで正反対。常に冷静で、発言する言葉もじっくり選んで使う。Tusk氏が勝利した事が明らかになると、ドイツもこの結果を歓迎。これで対ポーランド関係が改善されそうだ。

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どちらが首相か、大統領かわかりません。


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問題になったポーランドの週刊誌の表紙


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